2013 Sakura Medal Books

3 thoughts on “俺俺 by 星野 智幸

  1. もし自分の周りの人間が全て「俺」だったら。そんな想像を実際に本にしたのが、この作品です。最初は、主人公が拾った携帯電話でオレオレ詐欺をするといういわば現実社会の中での変わった出来事レベルですが、主人公がその携帯電話の持ち主と入れ替わったり、同じような境遇の「俺」とで会ったり、時間と共に「俺」がどんどん増えたり、果ては殺されても違う「俺」に意識が移ると言った風に、どんどん想像がエスカレートし、現代の常識では考えられない異次元に突入していきます。作者は、ストーリーの中で、「自分への信頼」などと言ったテーマを描いていますが、個人的には、終盤にかけて多くある、猟奇的な描写が、果たしてこのテーマに必要だろうかと疑問に思いました。自分の将来に関して、主人公と同じ悩みを抱える人はたくさんいると思いますが、この物語を通じて、そのテーマに共感するか否かは、好みの別れる所だと思います。

  2. この本はもし周りにいる人間全員が「俺」になったらという観点から描かれております。ある日マクドナルドにいた主人公が自分のトレーに忘れて置いて行かれた携帯電話を使ってオレオレ詐欺を行ってします所からはじまります。そこから主人公がこの携帯電話の所持者となり、徐々に社会全体が「俺」であふれます。それによって主人公の俺がほかの「俺」に起きた事でも自分の事のように思い、それが苦にもなります。前半は「俺」が少なく説明もしっかりしていてわかりやすかったですが、徐々に中盤に突入すると「俺」の数も増えてきて、個人的にはいらないと思うような場面もあったりして、正直つまらなくなっていきました。この本を通して僕は人それぞれが違うことの意味を考えさせられました。今世の中ではクローンなどが話題になってますが、人が違う事に意味があり、みんなが同じ思いなどを持つと社会がユニークさに欠け、苦しみに合うと、より大きな苦しみを一人が感じると思います。

  3. 知らない相手に入れ替わる事で始まってしまった悪夢。俺俺では主人公が偶々拾った他人の携帯電話から始まる主人公の悪夢を描いた作品、知らないはずの人間に入れ替わったのにいつの間にかその知らない相手が自分になっていた。今まで積み上げてきた人生は他人である自分に乗っ取られ、知らず知らずに「俺」が増殖していく。他人であるはずの人物がいつの間にか俺になってしまう・・・本当に自分だと認識している俺は俺なのか?そんな支離滅裂で途中混乱してしまう要素を孕みながらちゃんと読者を捉えているがとても良く出来ているなと思いました。意味が分からなくなってしまうが展開や意味が気になる、少し考えさせられる作品だと思いました。終盤から何が起こっているのか整理しないとわからないのとオチが甘いのが腑に落ちませんでした、もう少し粘るか救いようの無い話でまとめる方がオチがついたと思います。

Leave a reply to KIST 大山 鴻太 Cancel reply